システム制御工学の理論と応用(風力発電システム/小型無人船舶など)の研究をおこなっています。最近の研究内容を紹介します。

システム制御工学の理論関係

モデル予測制御

フィードバック制御の1手法で,制約条件を有する多入力・多出力系に対する有力な制御法として知られています。線形システムに対する標準的なモデル予測制御問題は,各制御周期で二次計画問題(Quadratic Programming:以下QP)を解くことに帰着されます。 このQPを,並列処理可能な小規模な部分問題(これもQP)に分割する方法を開発しています。例えば,大規模なひとつのQP問題が計算機資源やソルバーの制限で処理できない場合などに,小規模なQP問題に分割して処理(解く)するなどの使い道が想定されます。今後は,安価な複数のシングルボードコンピュータへの分割実装や,FPGA (Field Programmable Gate Array)での並列実装および理論的な部分の細部を詰めることを予定しています。

関連発表文献(一部)

スイッチドシステム

連続事象と・離散事象が混在したシステムは,ハイブリッドシステムとして知られています。例えば,電気回路では,離散値をとるスイッチング動作(On-Offの離散事象)と連続値をとる変数(電流,電圧など)が混在しています。特に,連続時間線形スイッチドシステムを対象として,スイッチング信号(離散値)が制御入力(の一部)と考えられる場合(Externally forced switching)について,制御法を開発しています。

関連発表文献 (一部)


洋上風力発電システムの制御

日本はエネルギー資源をもたないといわれていますが,世界有数の大きさの排他的経済水域をもち,海洋には膨大な再生可能エネルギー(洋上風力,波力,潮流など)が存在しています。これらを,経済的に継続可能な形で発電やエネルギー源(水素の生成など)などに利用できれば,低炭素社会の実現,エネルギーの安全保障などの観点で社会に貢献できるはずです。欧州では大規模な洋上風力発電が展開されていますが,着床式の設置が可能な北海沿岸の浅水域(<30m)に限られます。日本のように限られた浅水域しかもたないような場合,経済的な観点から浮体式の洋上風力発電の展開が期待されます。主に,浮体式の洋上風力発電システムの制御系 (ブレードピッチ,発電機トルク) の開発をおこなっており,システム制御工学分野で開発された高度制御手法を導入することで,制御系の性能改善を目指しています。制御系設計は,動作点周りの線形システムに基づきおこなうことが多いですが,その性能評価では,高精度なシミュレータ(National Renewable Energy Laboratory (NREL)のFAST)やスケール模型を使っています。また,複数の風車が設置されたウィンドファームでは,風車同士の相互干渉にが存在するため,ウィンドファーム全体での運用では,風車同士の協調的な運用が求めらます。ウィンドファームの最適な運用についても研究を進めていく予定です。

関連発表文献 (一部)


小型無人船の制御

主に二瓶泰範准教授(大阪府立大)と日本海工さんが中心に開発した小型の無人船舶(ロボセン)の制御関連の研究開発をおこなっています。制御面では様々なチャレンジ事項があります:例えば,1)海洋上は外乱の影響がつよい(風と波,潮流),2)故障検知・耐故障性が必須(水草・網など浮遊物がプロペラに絡まる),3)障害物(養殖用のブイ,作業船)の検知と回避,4)安定した自己位置推定(GPS外部信号の喪失などに対する備えが必要),5)制約条件下での最適な計測ポイントの巡回,6)複数台での協調巡回, 7)ドローンとの連携,などです。

関連発表文献 (一部)